4月1日 午前6時

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所詮、コータローの私に対する認識なんて、そんなものだ。 それは十分承知している。 今からの自分の申し出がすぐに受け入れられないだろうことも。 ……。 それでも、今日のことはずっと前から決めていたのだから。 気落ちして怯みそうになるのを踏ん張って、自分で自分に喝を入れる。 こわがってたら、ダメだ。 ずっと、ずっと温めていた、全力の気持ちなんやろ!? 私は一度ゆっくり呼吸をしてからコータローににじり寄って、微笑んだ。 「16歳になりました!」 「あー、16歳……。そうか、綾乃さん、早生まれでしたね」 「そやから、朝起こしに来たんやもん」 すると、コータローは眼鏡をきらりと光らせながら言った。 「そやから……? その接続詞はおかしいのでは? それだと、16歳になったから僕を起こしにきた、ということになりますが……」 起きぬけのくせに細かい文法チェックが入るところが、国語教師らしい。 それも、私が通っている薫風女子高等学校の。
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