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本日4月1日。ただいまの時刻、午前5時54分。
早朝から時計の秒針をこんなに真剣に見つめている人間は、日本中でも私だけだと思う。
5時55分まであと1分。
おしゃれ感ゼロの昭和な目覚まし時計は、もう20年も我が家に朝を知らせ続けているそうだ。
チッチッと小刻みに時を刻む針を凝視しながら、心の中でカウントダウンを始める。
あと50秒、49、48……。
「壊れてへんやろ」というおとーさんの一言で、中学生になって一人部屋をもらった私のもとにやってきた目覚まし。
アナログじゃなくて、デジタルの方が時間がすぐにわかるのに。
アラームの音ももっといろいろ選べるのがいいのに。
文句をいえばきりがなかったけれど、そんなことを言おうものなら、せっかく勝ち取った「自分の部屋」も取り上げられそうだから、有難く頂戴することにした。
でも、今日はキミがものすごく愛おしい。
カウントダウンへの確かな時の刻みを、実感できる。
あと、10秒、9、8……。
5秒を切ったあたりから、とうとう口に出していた。
「3、2、1……ぜろ。よっしゃ!」
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