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引き戸を開けるカラカラという音くらいでは目覚める様子はない。
そのままはいてきたサンダルを脱いで、そろそろと部屋に足を踏み入れる。
目の前には、布団からわずかに髪の毛が見えるだけの、山。
大好きなコータローのつむじ、だ。
つい、口元が緩む。
芋虫みたい……。
しかし、いつまでも眺めているわけにはいかない。
まずは 起こさないと。
普段は朝7時過ぎには出勤するから、そろそろ起き出す頃だ。
今日は金曜日だけど、着任式だけで休みみたいなものだと言っていたから、いつもよりゆっくり寝ているらしい。
それでも、起きてもらわないと!
思えば、こうして朝起こしに来るなんて、私が中学生の頃以来だ。
久しぶりのことで、少し緊張する。
ましてや、今は重大任務を抱えているのだから。
昔はいきなり布団をはぎとって「コータロー、起きやー!」と騒々しい起こし方をしていた。
けれど、今日の私はあの頃の私と違う。
なんてったって、16歳になったのだ。
女性の結婚適齢、に。
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