4月1日 午前6時

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引き戸を開けるカラカラという音くらいでは目覚める様子はない。 そのままはいてきたサンダルを脱いで、そろそろと部屋に足を踏み入れる。 目の前には、布団からわずかに髪の毛が見えるだけの、山。 大好きなコータローのつむじ、だ。 つい、口元が緩む。 芋虫みたい……。 しかし、いつまでも眺めているわけにはいかない。 まずは 起こさないと。 普段は朝7時過ぎには出勤するから、そろそろ起き出す頃だ。 今日は金曜日だけど、着任式だけで休みみたいなものだと言っていたから、いつもよりゆっくり寝ているらしい。 それでも、起きてもらわないと! 思えば、こうして朝起こしに来るなんて、私が中学生の頃以来だ。 久しぶりのことで、少し緊張する。 ましてや、今は重大任務を抱えているのだから。 昔はいきなり布団をはぎとって「コータロー、起きやー!」と騒々しい起こし方をしていた。 けれど、今日の私はあの頃の私と違う。 なんてったって、16歳になったのだ。 女性の結婚適齢、に。
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