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まず枕元に散らばっている本を持ちあげ、1カ所にまとめた。
『古典文学大系』と書かれた分厚い本たちは、私にはせいぜい枕にしかならないけど、コータローはきっと真剣に読んでいたに違いない。
本を片づけて空いた場所にしおらしく正座し、静かに布団を揺さぶった。
自分比、落ち着いた声を意識してみる。
「コータロー」
……。
山は動かない。
もう少し強めに揺さぶって、声のトーンも上げてみる。
「コータローさん、起きて下さい」
……。
やっぱり、動かない。
それでは……。
ドキドキと早鐘を打つ心臓を抑えながら膝立ちになって、山に少し乗りかかるように近づいた。
布団からわずかに見えている髪の毛を指ですくい、さらした耳に今にも触れそうなくらい唇を近づけて囁いた。
「コータローさん。
起・き・て」
「…………
うわわっー。
な、何!?
何事ですかっ!?」
目の前の山が大きく揺れて、崩れた。
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