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ガバッと半身を起こしたコータローは、きょろきょろとあたりを見回し、すぐそばに人がいることに気づいたらしい。
そのまま慌てて布団の周りを手探りし、畳に転がっていた眼鏡をかけた。
眼鏡越しにあらためてこちらを見つめてくる。
「……綾乃……さん?」
彼がかけている度の強い眼鏡は、レンズも分厚めで、子犬のような瞳は奥に引っ込んだように見える。
その表情を見て、心の中で呟く。
……はい、見た目50%ダウン。
一時期はコンタクトレンズにしていたけれど、ケアが面倒といって眼鏡に戻してから、ずっとそのままだ。
自分の外見になんて、およそ無頓着。
でも、そんなコータローが好きなのだ。
もっと本音を言えば、適度にダサくいてくれる方がこっちも都合がいい。
「コータローさん、おはようございます」
あらためて深々と手をついて挨拶をする私に、きょとんとするコータロー。
いつもなら朝台所で会っても、「コータロー、おはよー!」ですましている私の、らしくないふるまいに戸惑っているらしい。
「オハヨウゴザイマス……というか、さっきの、綾乃さん?」
自分の耳を指でごしごしとこすりながら、尋ねる。
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