73人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなに嫌そうにこすらなくてもいいのに、というくらい強く擦られた耳は、一部が赤くなっている。
「ええ。久しぶりにコータローさんを起こそうと思ったの」
引き続きよそいき声でにっこり微笑んだ私に、たじろいだ様子を見せる
「それは……アリガトウゴザイマス」
寝ぼけ眼のコータローは、こちらのペースに飲まれたまま棒読み状態で礼を言い、寝癖のついたぼさぼさ頭をぺこりとさげた。
相手の歳とかに関係なく、誰にでもコータローは礼儀正しい。
そんなところも、やっぱり好きだなあ、と思う。
だからこそ、今日のこの日を待っていたのだ。
「どういたしまして。
それより! コータロー、今日、私、誕生日やねん!」
いきなりいつもの砕けた口調に戻しながら、用件に入る。
「えっ……そうでしたか。それはおめでとうございます……もう17歳になるの、でしたっけ?」
まだ覚醒しきっていないのに、律儀におめでとうをいうのがコータローらしい。
でも、17歳って……。
今17歳だったら、私の行動は去年に実行してたから!
私にとって、16歳の誕生日はそれくらい大事な意味を持つ日だから。
最初のコメントを投稿しよう!