4月1日 午前6時

6/13
前へ
/22ページ
次へ
そんなに嫌そうにこすらなくてもいいのに、というくらい強く擦られた耳は、一部が赤くなっている。 「ええ。久しぶりにコータローさんを起こそうと思ったの」 引き続きよそいき声でにっこり微笑んだ私に、たじろいだ様子を見せる 「それは……アリガトウゴザイマス」 寝ぼけ眼のコータローは、こちらのペースに飲まれたまま棒読み状態で礼を言い、寝癖のついたぼさぼさ頭をぺこりとさげた。 相手の歳とかに関係なく、誰にでもコータローは礼儀正しい。 そんなところも、やっぱり好きだなあ、と思う。 だからこそ、今日のこの日を待っていたのだ。 「どういたしまして。 それより! コータロー、今日、私、誕生日やねん!」 いきなりいつもの砕けた口調に戻しながら、用件に入る。 「えっ……そうでしたか。それはおめでとうございます……もう17歳になるの、でしたっけ?」 まだ覚醒しきっていないのに、律儀におめでとうをいうのがコータローらしい。 でも、17歳って……。 今17歳だったら、私の行動は去年に実行してたから! 私にとって、16歳の誕生日はそれくらい大事な意味を持つ日だから。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加