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時間にして凡そ四半刻(30分)程が過ぎようとする頃合いに、漸く村長の説教は一段落着いた。ただしその説教を向けらた人物は全く以て耳には入っていないだろうが。
そんな事は今までに散々手を焼いてきたのだ、少女が此方の話を全て受け流していることくらい百も承知であろう。
故に、拳が唸る。
「ぎゃふっ!?」
「人の話はちゃんと聴くようにせんかとあれほど言うたじゃろう」
「うぐぐぐぐ、人が折角美味しいスイーツ食べ歩き計画を立案している最中にぃ、馬鹿になったらどうするの!」
「安心するがいい、既に馬鹿じゃ」
「ひどいっ!?」
「そんな事はどうでもよい、重要な事でもなかろうて、ほれ早う寺院へと赴かんか」
「どうでもよくないし重要だよっ!」
などと実に不毛な少女の弁、しかし当然ながら村長はどうでもいいと一蹴の後、寺院の方へと急かせる。
あの見上げても頂点の見えぬ大樹を囲む様に建造された白き石造りの寺院へと。
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目前に広がる白い建物、子供の頃から見慣れたそれであるが、中への立ち入りは巫女以外禁止とされていたが為にその様相は想像の中だけだった。
平時の心情であったならばこれ程までに感動的な事はなかったであろうが、如何せん今の彼女は先のことでやや不機嫌の様を呈している。
とはいえ、いつまでもそうしている訳にもいかない、これでも巫女としての教育を施された身なのだ、当初の目的通り神様とお友達になる等と不敬だ罰当たりだと叱られはしたがそれを変えるつもりは無い。
深く吸い込んだ息を肺に一時留めてから大きく吐き出す。
そうして数段程の階段を上り、閉ざされていた扉を潜る、巫女以外に踏み込んだ事の無い領域、プリマは一歩足を進ませた。
「うわぁ………………」
漏れる吐息と一緒に感嘆の声が寺院内に溶け込んだ、見据える先には赤い絨毯と白い祭壇、更に奥では光を浴びてきらきらと輝いてる様に見える大樹の根元。
陳腐な言葉の表現するならば、神秘的。
だが自身にはこれ以外の言葉が見付からないのも事実で、幻想的でもある風景に暫し立ち尽くしているだけだった。
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