終焉 : はじまりの、音がする。

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 年が変わって早朝、神社へと向かう人の波は多く、その反面、これから向かう場所は遠く離れているから閑散としたものだろう。 二人の間には会話は無く、比野もされるままに付いてくる。振り払う事も出来ただろう。  見通しの良い交差点だった。見通しが良いから避けてもらえたのだと、相手方の両親は泣いて礼と謝罪をしていた。 あの日、見る影もなくなったガードレールなど何処にもなく、此処で誰かの人生が終わったなど誰も知る由がない。 「貴方が言った事を考えてみた」  悠生が居なくなって初めて気付いた事の広さに目を見貼ったのは事実で、後ろを振り返った時、何も無かった様な気がした。 全ては悠生に創られた環境と感情で、貴瀬環という人間すら、存在しない。 彼のしてきた事が、全て正しかったかも分からず、お飾りの一端でしか過ぎない。
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