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小さな手の平が続き、最後の切れ端を見つけた頃、細くて長い、指に変わる。
流れ作業みたくなっていて、手元しか見ていなかった。その手を辿ると、見間違えない華奢な姿へと辿り着く。
残念なのは、しゃがみ込んで、顔を伏せたままで手の平を突き出される事くらい。
「君からこうして手を出してもらうのは初めてだな」
「....さっさとして」
手の平を掬えば、あの時と変わらぬ程に細く、到底男性の指先だと言っても信用されないだろう。
その感触を確かめるべく、やわやわと握ってやれば、縮こまっていた身体が更に小さくなる。
苛めているみたいだが、これくらいは許されるだろう。
一度も連絡は無かった。生きているみたい。慧が時折そう教えてくれただけで、もう、忘れられているとさえ思った。
「楽しかった?」
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