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「…上手い奴は一杯居て、でも優しくて、話を聴いてくれる人が吃驚する程沢山いた」
「それはあまり嬉しくない報告だね」
唯でさえ、君は人を惑わす。
「あと、ご飯が美味しい。一歩外に出ると絵画の中に居るみたいで…広くて楽しかった」
「やっぱり、あの時閉じ込めておけばよかった」これは本音だ。
手の平の上に乗っかった手に僅かに力が入って、握手とも繋ぐとも適当な言葉は見つからず、捕まえられた。それが一番近い。
「貴方の為に辞めてきたんだけど」
「え?」
隠れていない、耳が赤くなるのが見えた。
「貴方が言ったんでしょ。それ程の告白は無いって」
淡い期待だった。世界を広げた君の大きな世界に自分が入り込める程、何か伝えられていたか分からなかった。
何も声に出来ず、それを不安に感じたのか、漸く顔を上げた環と目が合う。
その表情は酷く不安気で、うろうろと視線が彷徨い、唇が震えていた。
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