夏なんて嫌いだ

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 ジリジリとこの身を焦がす太陽は、大地に反射しても目を焼くほど眩しい。  熱い。  痛い。  視界が真っ白になり、眩暈がする。  片腕に抱えた花束も、この暑さですぐに萎れてしまいそうだ。  全ての気力と体力を奪うような湿気と熱気にうんざりする。 「夏なんて、なくなればいいのに」  ジワリと滲み出る汗を片手で拭き、小さく呟く。  目の前に見える何の面白味もない大きな四角い箱のような建物までは、バス停から歩いて五分。  たった数分のことなのに、ダラダラと歩いていたせいか、何時間も歩かされたような疲労感が全身を襲う。  それも自動ドアを通り抜けるまでのこと。  建物の中に入ったと同時に錘(おもり)が取り払われたかのように体が軽くなる。
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