第1章

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「お狐様どうぞ」 「ありがとう」 アイスキャンデーを食べ終えても少年は傍を離れず、私の顔をジィーと眺め、考え込み、意を決した表情になり私を抱きしめた。 「オイオイ、私のような年寄りを抱きしめてどうするのだ?」 少年は私の耳に唇を寄せ話す。 「僕、志願しました。 家を、家族を、お守りください、お願い致します」 その言葉を聞いて私は、彼を説教しようとする、そこで私は目を覚ました。 ああ、夢か!? 目に溜まっていた涙を拭う。 戦争が終わっても、少年は帰って来なかった。 あれから70年以上の月日が経つのに、神社の境内では、あの時と変わらず蝉の声が鳴り響いている。 私の前を過ぎ去って行った幾多の人間達を私は忘れない、私が何時の日か消え去るまで、彼らの記憶を胸に留め続けよう。
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