第一話

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ざわざわと騒ぐ2年1組の教室に先生が入って来ると、一瞬にして静けさが訪れる。 その後に香蓮の姿が現れると、再び口々に話し合う声が漏れ出した。 「はーい、静かに。今日は転校生を紹介する。さ、自己紹介して」 ざわめきはぴたりと止み、生徒たちの目が香蓮に注視される。 「神楽橋香蓮です。ちょっと身体が弱くて乱暴な事は苦手ですけど、お友達になれるよう一生懸命ガンバります。よろしくお願いします」 小首を傾げてお辞儀をすると 「けっこう可愛い」「俺はイケる」「おにぎりがおいしい」 とそれぞれが隣の席同士で顔を合わせたり指を差したり、思い思いにざわざわと囁き合う。 言ってる言ってる。さてと、私も。 イケメンセンサー、オン! ピピピ…… 目の前にレティクルが現れ、男子の顔に照準が合わさると視界上の数値データが目まぐるしく動き出す。 注:イケメンセンサーは特殊能力ではなく香蓮個人の妄想の産物です。 ふふふ、貴方たちは私を品定めしているつもりでしょうけど、逆に貴方たちの方が品定めされているのよ。 深淵を覗くものは深淵からもまた覗かれている、ってね。 ピピピ……75、82、76……すごい、高イケメン反応がこんなに。 1つのクラスにこんなにイケメンが居るなんて、オラおどれーたぞ。 注:あくまで香蓮個人の感想です。 ピピピ……94!ウソ?オラわくわくすっぞ! 一番後ろの窓際、特等席。しかもこちらに手を振っている。 レティクル内の男子に注目すると、それは今朝の笑顔教信者だった。 お前かー! めっちゃ笑顔で手を振ってるよ。私たち知り合いじゃないからね。 露骨に目を逸らす香蓮。 「やあ、また会ったね」 なんか遠くから話しかけてきた。知らない人なのに。 「あはは、どうもー」 みんなの目もあるので無視は出来ず、適当に返事を返す。 「なんだ神楽橋、福笑門と知り合」 「いえ知らない人です」 食い気味に否定する。 フクミカド?公家か! 「今朝、友達になったんですよ」 はるか後ろの席から口を出して来る。 ちょっとフクミカド何言ってんの?
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