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「ちょうど良かった。斉藤、隣の席変わってやれ。岡田、空いてる席を斉藤の席へ」
「はーい」「はい」
斉藤も岡田も躊躇なく先生の指示に従い、即座に隣に空席が出来上がる。
なにこれ?新手のいじめ?
私知らないって言ったよね、先生。そして斉藤!岡田!フクミカド!
「いいなー、ライスくんの隣」「ライスやるなあ」
他の生徒のはやし立てる声を、香蓮はなんとか笑顔で受け流す。
ライスってなんだよ。なんで公家のくせに人気あんの?
みんなの期待の眼差しに連行されて、空いた席に歩を進める。
「やあ、僕は福笑門来助。ライスって呼んでね」
フクミカドライスケ。ライスケだからライスなのね。
「どぉもー、カグラバシカレンでーす。初めましてー」
感情のない声で、面識がない事をそれとなく演出する。
「そうだ。さっき君に渡しそびれたものがあったんだ」
あ、きっと学生証だ。拾ってくれてたのか。
赤の他人作戦もこれでお終いか。
「……あ、ありがとう」
おずおずと差し出した手に乗せられたのは、大きなおにぎりだった。
「良かった、朝は渡せなかったから。これで朝ごはんが食べられるね。あ、パンも拾っておいたけど、食べる?」
「おほほほほ」
笑い声と共に、握ったこぶしの隙間からつぶれたおにぎりが溢れ出す。
「香蓮って言うんだね。カレンか~。よし、今日から君をカレーって呼ぶよ」
「呼ぶな!」
香蓮の肘が来助のみぞおちを貫く。
鈍い音とともに吹き飛んだ来助が、大きな音を立てて後ろのロッカーにぶつかって落ちた。
やってしまったーーー!!!
静まり返る教室で、香蓮の肩にぽとぽとと、こぶしの隙間からおにぎりが落ちた。
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