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教室に戻る途中、安心したからか、少し事態を冷静に考えられるようになった。
この後教室戻ったら、きっとみんなから白い目で見られるだろう。
転校初日の自己紹介のすぐ後に、クラスの人気者を殴って気絶させる女なんて、どう考えてもまともじゃない。
今度こそおしとやかキャラで行こうと思っていたのに、最短記録更新だ。
覚悟を決めてドアを開けると、香蓮を見たクラス全員が詰め寄って来る。
ああ、ここまでとは……。
「ねえ、神楽橋さん、さっきの凄いね」「ライス吹っ飛んでたぞ。あれなんて技?」
みんなの表情は怒りではなく笑顔だった。
「……裡門頂肘」
理解が追い付かないまま質問に答える。
「ちーもんちょうちゅう?」「りもんちょうちゅうだろ」「すごーい!中国人?」「気功撃てる?」
「撃てないけど……。彼の事、心配じゃないの?」
「ライスなら大丈夫だよ」「ライスくんは不死身だから」「頭から血噴き出した時は『気絶する前に写真撮って』ってポーズとってたからな」
なにそれ怖い。逆に怖いでしょ、そんな奴。
それに、私みたいな暴力女、みんな怖くないのかな。
「はーい。みんな席についてー」
先生の号令で香蓮以外の全員が席に戻る。
授業中だった。
香蓮も自分の席に着き、隣の空席を見つめる。
いったいどんな人なんだろう?
授業が終わるとまたクラスメイトが何人か集まって来る。
ひとしきり質問に答えた後、来助とはどんな人なのかと質問してみる。
「ポジティブ」「ポジティブだな」「ポジティブね」「ポジティブだっぺよ」
異口同音、そのまんまでなんの参考にもならない。
「いつからああなったのかな?」
「入学当時からそうだったよね?」「そうだな」「岡田、同中だったよな」
名指しされたのは、あの席替えいじめでお馴染みの岡田だった。
「そうだな~」
席替えの件など無かったかの如く話し始める。
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