第一話

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ライスは中学一年の頃からああだったよ。もちろん目立って先輩に目をつけられた。 中学の頃ってさ、人生で一番『格好良さ』を勘違いしてる時期だろ? 反抗しないライスを殴って、強くて格好良くなった気でいたんだろうな。 けっこうデカい怪我もしてたんだぜ。 それでもライスは、先輩先輩と笑顔で近づいて行った。 ライス的には可愛がられてるとでも思ってたのかな? 最初は楽しそうに殴ってた先輩も、最後の方は怯えた顔で殴ってたよ。 結局は、笑顔でやって来るライスから隠れて逃げ回る様になってたけどな。 「辛い思いをしてるんだね、福笑門くん」 「ライスは辛いなんて思っちゃいないよ。どんな時でもそうさ」 岡田は肩をすくめて笑う。 「小学生の時はどうだったのかな?」 「さあな、そう言や3組の小堀が同じ小学校だったかな?」 始業のベルが鳴り、先生が入って来る。 みんなが席に戻り、授業が始まる。 来助の席だけ空いている。 みんな口を揃えてポジティブって言うけれど、そんなレベルの話? どうしてみんな当たり前に受け取っているの? 痛みを訴えないという事がどれだけ危険な事か、みんな分かっていないんだ。 昼休みになるのを待ち、小堀を訪ねに3組に行く。 「小堀なら今、ちょうど学食に行ったとこ……ああ、アイツだよ」 廊下を歩く後姿を追いかける。 「ねえ、小堀くん。福笑門くんと小学校が一緒だったの?」 振り向いて頷く小堀に続ける。 「彼って、子供の頃からあの……あんな風だったのかな?」 小堀は歩きながら、宙に視線を漂わせて記憶を辿る。 ライスね、ああなったのは確か5年の二学期からだよ。 そうそう、夏休みが終わって登校したら。 4年の頃はすぐ泣くし、むしろネガティブな事ばっかり言ってた。 俺、同じクラスだったから覚えてる。 っていうか、思い返すとそうだったって言った方が正しいかな。目立たなかった。 ポジティブになったきっかけ?5年の時は違うクラスだっかから分からないな。 ああ、改造手術を受けたとか噂になってたよ。
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