第1章 木造平屋の探偵

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   ――十月初旬。  私は一枚のメモを片手に住宅地を彷徨っていた。  夏場に比べれば幾分過ごし易くなったものの、やはり日が高いとじっとり汗ばんでくる。 「この辺なんだけどな」  口からついて出た言葉には、案の定、不安の色が滲んでいた。  私こと、柏木 由衣(かしわぎ ゆい)。  今年、二十二歳を迎えたばかりの私は現在無職。  なかなか働き口が決まらない、決まっても長続きしない。  そんな現状を見かねた父が、知人を通しバイト先を紹介してくれた。なんでも、その人のいとこだか甥だからしいんだけど……。  メモに書かれた地図を頼りにやって来たのは、住宅地。  
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