第1章 木造平屋の探偵

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  「あっ、私、父の紹介で来た柏木 由衣ですけど、この場所ってここですよね?」  こんな立派な家、敷居高いよ。無理! 「ああ、貴方が柏木さん。話は叔父から聞いてます」  ここへ来た理由をすぐ理解したのか、彼はにこりと笑い、事もなげにそう言った。  ……あっ、やっぱりね。  玄関の引き戸を開けると、一匹の白い毛玉が軽快なステップでとちとちとやって来た。 「なっ……」  図らずも、その毛玉とがっつり目が合ってしまった。 「なんですか、この可愛い物体は!」 「何って、犬ですけど……」  目の前にいる生物が犬なのは、言わずもがな分かっていた。  ポメラニアンだろうか。白くふかふかな長い毛、小さく丸い顔の中心にふたつ黒い目を輝かせ尻尾を振っている。  
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