第5章 理由

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   そして社長は篠宮さんの方を見上げ、何かを訴えるような目をした。  途端、篠宮さんが開口する。 「しゃがんで、隠れて!」  静かにトーンを抑えた声が、かえってその場の緊張を引き立てた。  その場にしゃがみ、木と雑草の間から息を殺し様子を窺っていると、左手の山の斜面から何かが下りてくる音が聞こえた。  それは次第に近づき、横たわる動物の方へ向かう。  ジャリ、と音を立てて目の前に現れたもの。それは、薄茶色い短毛のレトリバーに似た犬だった。  犬の後ろ足には、カメラ映像で見た傷と同じものがあり、それが捜していたルーフ君だということを認識させる。  
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