第5章 理由

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   ルーフ君は横たわるもう一匹に鼻先を近づけ、何度か前足で揺さぶっていた。  だが、ぴくりとも動かないそれに諦めたのか傍らで蹲ってしまう。  さっきここへ来る前に濱さんから聞いた話では、ルーフ君は元々野良犬で、その割には人に慣れていた。  だから、偶然山の近くをうろついていたところを保護したらしい。  もしかするとあの横たわっているもう一匹は、ルーフ君の昔の仲間だったのではないか。  犬や猫は人間よりも聴覚、嗅覚が鋭い。  いなくなった当時、濱さんを振り切ったのは、きっと何かしらの方法で仲間の危機を察したから。  
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