今はない話

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その時キッチンが目に入った。 私はいつも父親がしていたように上の戸棚をあけた。 そこにはナイフが隠されていると知ってた。結局見つかっていたのに。 それを私は手に持つと母親の元に向かっていた。 「な、何をしているの…!?」 「おかしいでしょう、三月兎というだけで何も言われないのは。どうして私は父親を失ったのにあいつには母親がいるの?」 「待って、1回それを置きましょう?ね?」 「私は何度も言ったのに聞いてくれなかったじゃない!そしたら、そしたら何か変わっていたのかもしれないのに!」 「………っ」 「私は!あなた達なんか嫌い!2人でよかったのに!全部!全部おかしくなったんだよ!」 そう言いながら私は母親のお腹にナイフを突き刺していた。 「……いっ!」 そしてその瞬間に私はハッとした。あんなに嫌いなあいつと同じことをしていたのだ。 父親がいなくなった悲しみと怒りで我を失っていた。 「や、だ!ごめんなさい!私、私何して、ごめんなさ……!」 どうしたらいいのか分からないまま私はへたりこんでいた。
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