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「なあ、何してんのお前」
後ろから彼がやって来たのだった。
「ねえ何してんのかって聞いてるんだけどさあ?」
そう言いながら彼は私の首をしめた。
その苦しさにどうしようもなくただずっとしめている手を離そうとしていた。
自分も同じことを父親にしたくせに
自分がされたらこんな事をするのかなんて思った時だった。
コトっと父親の時計が下に落ちたと同時に手から開放された。
「やっぱお前にも同じことしてやるからさ」
そう言ってあいつは落ちていたナイフを拾った。
私は時計を慌てて拾うと握りしめた。
「ユ、ナ……やめ……」
とか細い声がしたがそんなのに反応していられる時間がなかった。
昔父親に「何かあったら一度だけお前にも使えるからね」と言っていたのを思い出す。
使えるのはただの一度きり。
ごめんなさい、決して許されない事を私はしてしまった。
だから、だから
「お願い、全部最初に戻って!」
ナイフが私に向かって振りかざされた時
当たりは白く包まれた。
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