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「ついたぞ、ミナ.........」
部屋まで俺を抱き抱えたまま歩いてきた大我が、ベッドの上に俺を優しく横たわらせる。運ばれている間にある程度回復してはいたが、俺は口には出さなかった。
「.........あぁ.........」
「だ、大丈夫か、ミナ.........?俺のせいで何かきついとか、体調悪いとか.........」
「.........大我。ちょっと顔貸せ」
「え、何だ、ミナ」
素直に顔を寄せてきた大我の額に力の限り頭突きをした。ガチン、と、普段なら中々耳にする事のない音が響いた。
「っ、てェエエェエエエ!!!?」
頭を抱えた大我がそう叫びながら驚いた顔で俺を見ている。よほど痛かったのか、その眼にはうっすらと涙が滲んでいる。
「い、きなり、何.........」
「.........お前。さっきのは、一体何だ?」
「さ、さっきのって.........」
「さっき、坂上の前で俺の口に指突っ込んだりと色々好き勝手してくれたじゃないか」
「あ、あれは、ミナが.........」
「俺が何だ?まさか、坂上と仲良くしていたからとか言うつもりか?だからあんな大勢の前で俺を辱めるような事をしたとか言うんじゃないだろうな?ふざけるな、もう一回さっきよりさらに強く頭突きしてやろうか」
俺がそう言った瞬間、大我が守るように自分の額を手で覆う。俺も痛かったから頭突きなんてもうするつもりはないがな。
「.........お前は俺の事が嫌いなのか?」
「そんな訳ないだろ!!俺はミナが大好きで」
「だったら、どうしてさっきみたいな行動に出られる?知り合ったばかりの知人や.........他の生徒の前で好き勝手触り散らかされて.........情けない様を見せる事になって.........それで、俺がどんな思いをするか少しも考えなかったのか?」
「...............!」
「俺は、すごく嫌な気持ちだった。それはお前が嫌いだからとか、お前に触られたくないからとかじゃない。お前が、坂上に対して牽制するためだけに俺を必要以上に触り散らかしたからだ」
俺がそう言った時。大我がビクリと一瞬だけ体を揺らしたのを俺は見逃さなかった。.........どうやら図星だったようだな。
「満足したか?坂上の前で俺を辱めて.........坂上もまさかお前があそこまでするとは思ってなかったからさぞかし驚いただろうな。俺もお前があんな風に俺に触れると思わなかったから驚いたし.........ショックだった。.........お前は、普段から言動は危なっかしいヤツだけど.........俺が本当に嫌がるような事はしない。本気で嫌がったらやめてくれる。そういう線引きができるヤツだと思っていた。.........でもそれは大きな間違いだったようだが」
「.........!.........み、ミナ.........!」
「.........俺が納得できるような.........許してもいいと思えるような申し開きがあれば言ってみろ。.........だからと言って許すという訳じゃないがな」
「.........お、俺.........その.........ご、ごめん.........俺、自分が知らない間にミナが知らないヤツと仲良くなってるの見てカッとなって.........俺の方が先に知り合ったのに、俺の方が、ミナの事、好き、なのにって..........色んな、事が、頭ん中ぐるぐるして................」
「.................」
「.........ミナは見た目もだけど.........中身も最高だから.........いつも皆がミナを好きになる。どいつもこいつもミナに惚れて、どんどんミナを求めるヤツが増えていく.........それに不安がある訳じゃない。だって俺は自分が一番ミナの事好きだって自信があるし......他のヤツらがミナに惚れようとも俺の気持ちが負けるだなんて事は万に一つもねえって思ってる...........だけど、だけど.........ミナの気持ちはそうじゃないだろ.........?」
「俺の、気持ち.........?」
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