第1章

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柔道 100キロ超級の決勝戦をテレビ観戦し、そこで改めて、日本と外国との根本的な考え方の違いを見た。 俺は柔道経験者で、一応は初段。 もう半世紀以上前の話しになるが、我々の年代では引き分けがあった。 勿論、順位を確定する必要がある時には、旗判定の優勢勝ちはあったが、団体戦では引き分けがあった。 当時の判定基準は、一本と技有りだけで、有効とか効果等の細分化された規定はなかったし、勝敗を分ける指導も無かった。 その伝統は、日本の柔道にはまだ残っているが、国際化されたオリンピックの決勝戦では無かった。 我々の時代でも、技有りを取った選手が、腰を引いて逃げる事は勿論あった。 それは実力伯仲の場合等が多かったからで、技有りを取る迄は技で勝負をし、その後で負けない為に腰を引く。 それと、引き分けがある団体戦の場合には、技有り以上が無ければ引き分けであり、弱い選手が腰を引いて逃げ切れば、それはそのチームに取っては事実上の勝ちだからだ。 俺の体験を話せば、その時の相手は茶帯で小さく、明らかにこっちが強く引き分け狙いかという相手で、最初から腰を引き気味だったのだが、開始早々に内股で技有りを取った。 その後、相手は一本負けだけは避けたかったらしく、腕を突きだして腰を引いて、たまに強烈な足払いだけを掛けてくる。 スネに爪が当たるは、蹴られて痛いは、こっちの技は踏み込めなくて浅いから、技の始めで逸らされて効果は無いはで、スネに痛みを重ねる度にだんだん腹が立ってきてしまって、10センチ以上身長が低い相手に対して、綺麗に投げ飛ばしてやろうと背負い投げを仕掛けた。 背がかなり低く腰を引く相手に、普段なら背負い投げにはいかない。 が、あの時は、相手を舐めていたし、背負い投げが綺麗に決まればカッコ良いしで、無理やり背負い投げに行ったのだ。 そしたら相手の背中に自分から乗ってしまって、逆に背負い投げ。 部長の先生には怒鳴られ、先輩の主将には怒られ、勝てる予定の俺が負けたから、団体戦で久しぶりに勝てる筈の試合に負けてしまった。 俺は副将だったから、それまで負け1引き分け2で来たのが無駄になったのだ。 書いていて今頃気が付いたのだが、こっちは俺と主将しか勝て無い。 主将が引き分けたら代表戦になる。 そこでも引き分けたら俺が出る。 だから少しでも疲れさせよう、ダメージを与えようと、腰を引いて粘っていたのだ。
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