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糸車
糸車が回り
紡ぎ出された恋文は
憂鬱を前にして
いともたやすたく
巻き取られてゆくのだろう
風車が回り
目を奪われた時にもう
時間は呼ばれて
かくもかぐわしき
今へと飛んできたのだろう
水車が回り
しぶきの涙が顔を走れど
戻らぬ時間は
たしかな気持ちも
足らない願いと繰り返し
火車は回り
舌足らずな文章を
惰性で殴り
安堵しては気取り
さすれば糸車は回り
手繰り寄せたるあるべき未来は
所詮は吐き出す形など
選べぬことを教えてくれて
そうして風車は回り
水車は回り
火車は回り土のたうって
口裏合わせで舌打ちしたりて
投身、君に届くほど
糸車は回り
かくもたやすく矢車は回り
射出する向き不向き知り
君来たりては叶えられたい
叶えられたい彼女の願いを
叶えてあげたいコトバのもじりで
数えてあげたい叶えた数だけ
夕焼け小焼けに焼きつけて
伏せろ伏せろよそのままに
さもなきゃ葬には化けれぬぞ
2016.08.15
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