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その兆候
その誘惑に勝て
美しき酒に勝て
美しき闇に勝て
悪夢に魘されたね
嫌な想いをしてきたんだ
枯れた植物をみて泣いた
横たわる昆虫に情けをかけた
その誘惑に勝て
穢れを許せずに穢れ
愛しさ隠せずに悶え
愛を踏み潰され生きてきた
辛い人生がようやく終わると
なぜかみんな慰めるように
君の死兆を覗き込むんだろう
その誘惑に勝て
病める心で
病める身体を
先取りする気かい
今神に赦されたと
抜け駆けをする気かい
災難と駆け落ちしてみたところで
白紙のノートは白紙のままだ
仮に君がずっと前から
死神とやらに好かれ
何度も死にかけては生き抜いて
今ようやく慰めの死を見つけたと
涙で心を濡らしていたとしても
そう言いながら苦しんで居なくなった人を
まさか知らないなんて今更言えない
彼ら彼女らの後を追っても
そうして彼ら彼女らの慰めを受けていても
諦めちゃダメだ
同情になびいちゃいけないよ
そこに本当の幸せはないんだから
思い浮かぶ顔がないのなら
その人は笑ってくれないのだから
権利とそれに迫られていることを
混ぜこぜにして消えていくなら
亡くした人は顔すら誰にも見せられない
死にたい病なんかじゃない
誰の同情も慰めもいらない
誰を泣かせたいわけでもない
誰かを贖うそんなつもりもない
死んでしまいたいんじゃない
ただ居なくなりそう
ずっとそんな気がしているだけ
誰も決めてはくれない命
この物語は必ず続いてきたよね
たった一つのことさえ常にて
頭のよくない僕でも分かる
いかに美しく死ねるとしても
そうしかならない感じがしてもね
何が君を痛めつけてる
暗くて怖い不吉な知らせ
命からがら逃げなきゃいけない
逃げきれたらこんどはもう一度
今逃げてる人を助けてあげよう
それではじめて笑えるはずだよ
生き抜いていこうその人と
君が求めた全てを見せてよ
見届けていこう笑顔絶やさず
残念なことに
一つの魂が世界を救う
兆候あらば
残念なことに
一つの愚かが万をも殺す
世界であるなら
君愛しそに願えし者とは
その幸せにのみにて咲けとし慰む
安らぎは
死に非ずしてとこしえに
2016.09.14
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