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 「この墓にはな、十年も前にストレスで狂って首吊った男が眠ってんだ。なんでも死ぬ数日前に自分でこんな山奥に墓を買ったって話だ」  青年が声を潜めて言った。  「そんなのただの噂だろ」  少女はそう言って男の家に唾を吐いた。  男は苛立ちが限界に達した。背後から少女の首に手を当てた。絞め殺してやろうと思った。  「え、なに?なんか首の辺りが冷たいんだけどっ!」  狼狽する少女に青年がすかさずデジタルカメラを向け、シャッターを切った。  突然のフラッシュに男は驚いて少女の首から手を離した。  「ヤダッ、ヤダッ、怖いって~!」  少女は慌てた様子で青年の腕にしがみついた。二人はデジタルカメラの画面を凝視した。撮ったばかりの写真を確認しているようだった。  二人の顔がみるみる青くなっていく。  次の瞬間、二人は金切り声の悲鳴を上げて走り去って行った。  「すげぇ、すげぇよ、コレッ、ネットにアップしようぜ!」  遠くで青年がそう叫んでいた。  写真がネットに挙げられ、多くの人間の目に晒される。有名になるにつれ、肝試しに訪れる若者も増えていく。負のループ。  男は消沈してしゃがみ込んだ。そして消え入りそうな声で呟く。  「夏なんてなくなればいいのに」
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