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すると、与ひょうは、
「無理をするなよ、かわいいおつう。愛している。」と言ってくれた。
「はい。わたしも与ひょうさんを愛しております。それから織る姿は、絶対に見ないでくだせい。」そう、言い残し機を織るため、また部屋に入った。
痛い痛いと血をにじませながら飲まず食わずで機を織ったが、少なくなった羽では前よりも織るのに時間がかかった。そしておつうは前よりもやつれてしまった。
「おつう、ありがとう。やはりお前を一番愛している。愛しているのはお前だけだ。」
それを聞いておつうは嬉しかった。彼を愛しているから自分は布を織ったのだ。きっと与ひょうもそれを判っている。そして彼が本当に愛しているのは自分だけだと。
でも、獣と人が一緒になるには、こんなにも女は耐えねばならぬものなのかと、こっそり涙を流した。
「おつうさん、本当は判っているんでしょう?貴女は与ひょうに利用されているだけかもしれないと。」
「さとさん。判っています。でも私は与ひょうを愛しているのです。」
機を織るたびに、貴方はどんどん借金が膨らんで、与ひょうはその上澄みを手に入れている。返し終わったころにまたやって来て、おつうに新しい機を織らす。
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