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「お疲れさまです、先輩」
石段に座した少女に、買ってきたアイスキャンデーを差し出す。
「ありがとう! 暑いのに歩かせちゃって、ごめんね」
「いえいえ。先輩は休んでてください」
大人たちも目を瞠る、力強い踊りだった。狐の白面が、華奢な少女に神通力を宿したかのような。
「ガキども、怖がったり手を叩いたり大忙しで」
「ダンス部冥利にも尽きるってもんだね」
ブレイクからソシアルまでこなし、果ては地域の祭りに呼ばれるとは。
「長く続くといいね」
「何が」
「このお祭り」
先輩のどんぐり眼に、参道ではしゃぐ子供たちの、まばらな姿が映っていた。
「……じゃあ、心ばかりの散財でも?」
「あたし、カステラ食べたいな」
「おごりますよ」
「よし、行こう!」
アイスキャンデーの残りをしゃくしゃくと噛み砕くと、彼女は勢いよく駆けだした。
小さな後ろ姿に、俺は願った。
「どうか、長く続いてくれ」
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