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 ここで腹が決まった。  僕は一つ、特殊能力を持っている。一日に一回しか使えず、短時間しかもたない。有意義な使い途が見つけられず、度々、僕は野球に利用していた。  その能力は――僕以外の時間の流れを遅くすることか出来るというものだ。  今日みたいな最終打席や、ここぞという時に使う。チャンスは一回のみだから、試合中、投手の配球を注視する癖がついていた。バットの届かない球を投げられたら目も当てられない。必ずストライクゾーンに入ってくる時に使わなければ意味がないのだ。  杉田が振りかぶる。同時に額の奥に意識を集める。やがてスイッチのような存在にたどり着く。杉田の上げた足が地面に着いたその瞬間、僕は額の奥のスイッチを押した。
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