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彼女の車に乗っけられて連れてこられたのは、近くのボウリング場だった。
「目指せ9ポンド」と言い放った彼女は8ポンドの球を持ってきた。
何がしたいんだろう。この人は。
「ほら、光一くんも」
彼女に強引に引っ張られ、ボールを選ばされた。
僕は13ポンドの球を選ぶと彼女は「生意気ボーイめ、ふん」と言った。なぜか、『もう君と付き合うのはしんどい』とも怒られてしまった。
「はあ?」
何なんだろう。このコントみたいなものは。とりあえず僕は陽子さんに聞いてみた。
「陽子さんはどのボールにしますか」
そう聞くと陽子さんは機嫌よくなったらしい。またニコニコしだした。
それから僕らはがむしゃらにボール投げ続けた。
久しぶりに投げたせいで、最後の方は僕も腕が痛くなってしまった。指先が汗をかくたびにピンを外していく感覚も、乾かすための送風機に手を持っていくのも久しぶりすぎてなんか泣けた。
こんなに元気にあそびまくったのは何年ぶりだろう。
嬉しくってたまらなかった。
結局2ゲーム投げ終わったところでお開きになった。もちろん、陽子さんが一番点数が低かったことは言うまでもない。
「じゃ、陽子さん。俺の背中にどうぞ、受付までおぶっていくんで」
そう言うと彼女は「うふふ、光一くん優しいのぅ」と言った。何を言っているんだろうこの人は。
僕は彼女に対して、小さな声で言った。
「当たり前だろ、彼氏なんだから」
――背中の方で鈍い打撃がした。それが照れ隠しだということは十分承知だった。
どうやら聞かれていたらしい。
あー恥ずかしい。
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