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「ねえ、聞いてる?」
狐面をつけた少女が心配そうに尋ねてくる。
その顔は何度だって見てきた顔だ。
そりゃ、肉親には負けるけどさ。
それ以外の他の誰よりも彼女を見てきた。
「ん、大丈夫だよ」
「ほんとに?」
だから、わかってしまう。
「それより、ほら」
持っていたアイスの片方を少女に渡す。
「え! くれるの!?」
「もしかして両方僕が食べると思ったの?」
「だってアイス持ってぼーっとしてるんだもん」
「でも良かった。元気いいみたいで」
そう言って少女は、にぱぁと笑う。
ふと、少女にきみの影が重なる。
拗ねて顔を赤くするきみを、抱きしめる。少女が不思議そうな顔をする。
体は同じなのに。なんで、違うんだ。
「どうしたの?」
「いつになったら戻るの?」
それはこっちの台詞だ。
あの日、事故にあってから――
いつになったらきみは俺の愛したきみに戻ってくれるんだ。
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