生はまこと散華(さんげ)に尽きる

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  “絶対に”と付け加えると、 女性はぎりぎりと 歯を食いしばり 「おぼえてなさい!」と 使い古されすぎて すでに意味のわからなくなった 一言を残し、 夜の街に消えていった。 彼女がいなくなったほうを ぼんやりと見つめ、 足元にどっと疲労が 落ちていくのを感じて 途方に暮れる。 こんな、 ただの言い合いで片が付くとも 思えなかったけれど。 桃さまの縁談には、 もっと別の誰かの思惑が からんでいたようだし。 どちらかといえば、 そっちのほうが頭が痛い。 誰かが私を 手に入れようとしているみたい── なんて、 どのつら下げて 桃さまに言うっていうの。 千佳と話して、 すべて整理できたあと 真っ先に出てきた感想は それだけだ。 .
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