生はまこと散華(さんげ)に尽きる

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 同じ路線の電車に 再び乗り込んで20分、 そう遠くはない街に 降り立った私は、 うっすらとした 記憶を頼りに通りを進む。 その途中で、 何度も脳内で「なにを今さら」と 冷静な自分に嘲られたというのに、 私の足は ちっとも止まらなかった。 街灯のおかげで 夜でも充分明るいこの道は、 記憶よりも少し古びて くたびれかけていた。 歩道を彩る 赤煉瓦のタイルからは、 光沢が失われている。 この街が折り重ねた時間は 足下のタイルだけでなく、 アンティークタイプの 街灯にも刻まれていた。 深いグリーンは黒ずみ、 あちこち錆びて 塗装が剥げている。 .
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