生はまこと散華(さんげ)に尽きる

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  新しくきらびやかなものよりも、 こうして少し古くなったものに 囲まれたほうが、 人は安心するんだと思う。 きっと女だって そうだと思うのに、 どうして男の人は新しい、 若いものも欲しくなったり するのだろう。 元から持っていたほうを 手放す気なんて、 これっぽっちもないくせに。 頭をちらちらするのは、 平気な顔をして 私を欺き続けた乾先生だった。 正確には、 乾先生の奥さまだけど。 あの頃私は、 乾先生の奥さまのことを 知っていた。 だから“欺かれた”なんて 被害者づらをする気はない。 だからと言って、 それを知らずに 私を手のひらの上で 転がしているつもりだった 乾先生に罪がなかったわけじゃない。 .
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