生はまこと散華(さんげ)に尽きる

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  最初は、 女として勝てないと 純粋な敗北感を得ていた。 女のキャリアで、 10年は大きすぎる。 乾先生との関係に 慣れてからは、 なにも知らないで いい気なものねと優越感を。 そして、 乾先生との関係を 互いに疎ましく感じ出した頃 得ていたものは── 罪悪感。 あの女性は 乾先生の家族なんだと思ったら、 胸が疼いた。 私は他人の夫を盗み、 他人の家族を 侵しているのだと思うと やっと悪いと 思えるようになった。 私は自分が大人になるために、 彼との背徳の恋をいいように 利用していたのかも知れない。 そんなつもりはなかったけど、 今思えば結果的に あの恋のあと 私の視野は ぐっと広がった。 でも、 変な話だ。 その頃は自分の変化の いちいちに 敏感でいられた。 .
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