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「もしかして」は
「もしかして」のままにしておけば、
確信することはない。
本当にレストランが
なくなっていることを──
乾先生の奥さまが、
亡くなったのだということを。
こうやって夜も更けたころ、
もうだれのどんな慰めも
届かなくなるような時間に、
わざわざ見に来て
現実にしてしまう私は、
明らかに
自虐趣味の塊だ。
そんなつもりはありませんでした、
なんて言い訳は
もうできない。
少なくとも、
自分に対しては。
はらはらと、
あのとき流せなかった
涙がこぼれてくる。
寒い夜風にさらされて
泣くなんて、
明日も仕事が
あるのに私は
一体なにをしているんだろう。
「……ばかみたい」
本当に、
ばかみたいだ。
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