420人が本棚に入れています
本棚に追加
『……木枯?』
数回のコールのあと、
夜風にかき消されそうな
声色で、
その人は出た。
「乾、先生……」
懐かしすぎるその声に、
体の芯が疼き出す。
けれどその疼きは
決して
欲求なんかじゃなくて──。
「先生、
やめてください。
……これ以上、
彼を痛めつけないで……」
私の情けない懇願に、
乾先生はふっと笑った。
『やっぱり僕の性分、
覚えていてくれた』
.
最初のコメントを投稿しよう!