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「あ……
乾せんせ、
あ……」
渇いた空気に響く
自分の声が、
淫靡だった。
人目を忍んで
重ねる情事が、
楽しかった。
一人前のつもりで
まだ経験の浅い私には
10歳上の男の
なにもかもが刺激的で、
魅力的だった。
弄ばれる快感に、
乱れに乱れて
溺れていった。
「木枯……」
吐息混じりに
低くささやかれるのが好きで、
何度も何度も
それをせがんだ。
乾先生の愛撫は繊細で、
それが気持ちの
大きさなのだと
疑うこともなく。
……別にあの人から
愛を乞いたかった
わけじゃない。
私を恋に駆り立てたのは
“許されない相手”
だという現実だ。
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