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ここまでくると、
もう理屈云々なんて
意味をなさなくなるものだ。
彼女は、
私に会いに来た。
「……こんばんは」
私に気づいた彼女に
なにか言われる前に、
ぺこりと頭を下げた。
会話のセオリーとか、
立場の優劣がどうとか、
いつも真っ先に
気にすることは
無駄だと思えたからだ。
「あら、
私のこと、
知ってたの」
動いただけで
つやりと輝く肌、
ゆるく巻かれたきれいな髪が、
彼女が生々しいほどに
余裕のある女だということを
示していた。
1日のほとんどを
仕事に費やしている私では、
こうはいかない。
……こんなによく
手入れされた人を、
桃さまはずっと抱いてたのか、
と落ち込みそうに
ならないでもないけれど。
でも、
違うはずだ。
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