生はまこと散華(さんげ)に尽きる

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  「奥さま、ですよ…… それを障害物だなんて」 「結婚の経験のない きみにはわからないだろう? 彼女のことは大事だと、 僕だってちゃんと 思っていたさ。 ……けれど相手を 人間だと思えなくなっていく、 あの腐心」 「……」 「彼女はそこにいるだけで 僕の平穏を、心を、 削り取っていった。 我慢ならないことだった」 「だったら……」 「そうだね。 ちゃんと別れようと 思っていたよ。 でも、 先に死なれてしまったからね」 こともなげに、 乾先生は微笑む。 結婚が恋愛や人生の ゴールだなんて思ってないけれど、 簡単に決められる わけじゃないことくらい 知っている。 きっと愛だけでも かなわないことだし、 条件や打算だけでも かなわないことだ。 .
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