生はまこと散華(さんげ)に尽きる

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  もがく私をものともせず、 乾先生は顔を寄せてきた。 「……愛してるよ、 杏」 「……ッ!!」 これまでに 聞いたこともないような 甘ったるい声が、 耳に注がれる。 脳裏に 桃さまの顔が過るのに、 私の体はこの毒に似た 快楽を覚えていた。 「嘘……つき……ッ!」 「嘘だと思うなら、 振りほどいて逃げればいい」 「やめ、て」 「できるかな? 僕に連絡してきたのは きみのほうだ」 「こんなことしたくて 連絡したんじゃ、 ありませ……っ」 言うが早いか、 乾先生はクスッと笑うと 私のうなじからなぞり、 頭を抱えた。 「……カマトトぶるのも いい加減にしなさい。 欲しいなら欲しいと、 そう言え」 .
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