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「聞こえるか、ジャクヤ。そちらの状況はどうだ?」  実際の戦場とは異なり、この演習場には電波の発信源を特定するシステムは導入されていなかった。タツオの腕に張られたディスプレイにちいさくジャクヤの顔が浮かんでいる。 「今のところ問題なし。敵はかなり混乱しているみたいだ。ローラーになにも引っかからないまま南端までいったから」 「焦っているだろうな。もう夜明けまで1時間もない。反転してもう一度ローラーをかけてくるはずだ」  作戦の変更は下策だった。100人近い人間を動かすには時間と手間をくう。命令を改めていたら、すぐに空が明るくなるだろう。同じ作戦をさらに密度と精度を高めて展開する。それしか敵に残された手段はない。 「ああ、だんだんとこちらに勝利の目が出てきた」  ジャクヤはほくそえむように低く笑った。なぜかキツネの笑みを思い浮かべた。タツオは意を決して質問した。 「さっきの話だけど、天童本家のワタルをどうするとかいう」
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