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 ジャクヤは小型自動車ほどある石に手をあてていった。 「この石だって、何億年という時間を生きてきている。そのあいだにいろんな気や歪(ゆが)みを受けているんだ。性格のいい石もあれば、さわるだけで病気になるような悪性の石もある。ぼくはこいつに決めた」  横じまの走るおおきな岩塊だった。ジャクヤは目を細めていった。 「この石はぼくによく似ている。もとは砂だったのにマグマの熱を近くに浴び続けて変成し、ひどく硬く頑固になった。割れば鋭い武器としてもつかえる。金属みたいに比重が重い」  戦場の気どころか、石ころにさえ、よい悪いと人との相性があるという。タツオはジャクヤという人間の奥の深さに目がくらむ思いだった。 「きてくれ、タツオ」  ジャクヤは自動小銃をかまえたまま、小走りでさらに10数メートルほど敵陣に近づいた。そのあたりにある岩につぎつぎと手をふれていく。 「タツオはこれがいい。この石も穏やかで気性が素直だ。なにかを守りたいという気を放っているよ」
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