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「これはどういう石なんだ」
「元は泥だよ。マグマの熱を受けたのは同じだけど、こちらのほうが軽くて、なめらかだ。タツオはこの岩陰に身体を隠してくれ」
ジャクヤが選んだ岩は、ひさしのように張りだした部分があった。ちょうど人ひとりが膝を抱えて雨宿りできるほどの空間である。
「こんなところに座りこんでいたら、すぐ敵に発見される」
ジャクヤはにやりと笑った。銀の目が底光りする。
「いいから、座って。またさっきみたいに自分は石だと思うんだ。今回は川の底の泥でもいい」
タツオは拳銃を胸に抱えて、岩のひさしの下に身体(からだ)を押しこめた。
「それでいい」
ジャクヤはおかしな印を結びながら周辺の砂を拾い、呪文をとなえながらタツオの頭から振りかけていった。この者を石となし……悪逆なる敵の手から守りたまえ……御石の意思のまま数億年のうちの刹那(せつな)、御手を貸したまえ。
最後に印を結び、ジャクヤは立ち上がった。
「これでいい」
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