世界はそれを家電と呼ぶ2

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何年か前に朝はパンがいいなんて言ったことがある。なぜなら俺は朝はコーヒーを飲まないと目が覚めた気がしない人だからだ。他の人は知らないが、ご飯にコーヒーは合う気がしない。 ちなみにそれはうちの母親に向けての言葉なんだが、他にも聞いていた者がいるんだ。父親や今はすでに社会人の兄貴なんかじゃない。家族なんかじゃないんだ。人でさえない。 「おうおう!なんだなんだ。またパンなんて軟弱な物を食べようってのか?全く、日本人は朝から米って決まってんだろが!これだからお前ぇは彼女が出来ねぇんだ」 なんか、鉢巻きを頭に巻いた威勢のいい角刈りのおっちゃんがテーブルに胡座をかいて、腕組みしながら俺に言葉を向ける。どっかの江戸っ子みたいな奴だ。人?違うさ。見た目は人っぽいけどさ。だって小さいもんな。炊飯器と同じ大きさだ。だって炊飯器だからなこいつ。 というかご飯を食べれば彼女が出来るなら皆他の物に浮気はしない……残念ながら俺の実力だ!悪いか? 「今日はお弁当用に炊いたコシヒカリが炊かれている。今日はスミレさんの水加減も抜群だ。冷蔵庫には粒のしっかりした明太子も入っている。熱々のご飯に乗せて食べてみたくねぇか?おいおい、我慢は身体に悪い……オイ-ー!!」 近くのパン屋で買い置きしてもらっていたクロワッサンを頬張った。 ガクリとうなだれてしまう炊飯器さん。気の毒だけど、これは何年も続く真剣勝負。手を抜くわけにはいかないんだ。男と男の勝負だ。 まあ、どうせ夕飯にはやっぱりご飯だろ?とかホクホク顔で自慢しまくるんだろうから。 二口目を食べてコーヒーを飲むと頭を抱えて悲鳴をあげる炊飯器。朝はコーヒー派のでコーヒーに合うご飯を用意できるなら考え……いや気持ち悪いな、おい。
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