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「今日も綺麗だねぇ。」
「――何がです?」
「何がって、空。」
「…、あぁ――確かに、綺麗な秋晴れですね。」
セシルさんにそう声をかけられて、私はそう答えた。
「あー、こんなめんどくさいこと、やらずに済んだらいいのになー。」
「…そうですね。――でも、今はもう仕方のないことですから。」
「こんなご時世じゃね~。はぁ…」
セシルさんがそうやって大げさにため息をひとつつくと、なんとも良いタイミングでチャイムが鳴った。
「あ、チャイム鳴りましたよセシルさん。教室に戻りません?」
「って、まだ苗字で呼んでんのー?俺のことはエリオットでいいって何回言わすんだよユリア。」
「いや、そうは言われましても…というかそういう訳には…」
「俺がいいって言ってんだからいいんだってば。細かいことはナシ!」
「………――じゃあ、エリオットさん。」
「はいっ!」
私が観念して彼を名で呼ぶと、彼はさも嬉しそうに満面の笑みで挙手し返事をする。
私は、彼のこういったところはどうにかならないのだろうか、と思いつつ呆れ顔で彼を諭す。
「とりあえず、教室に向かいましょう。授業、始まりますよ?」
「ていうか次の授業って何だっけ?」
私は、流石に溜息をつきそうになってしまったのを必死に堪えつつ、――彼の問いに、答えた。
「…確か…貴方のクラスだと…生物では?」
「あぁ。………動物の骨の仕組み、だったっけ…?他のクラスのことなのによく覚えてんなー、流石ユリアー。」
「…しっかりなさって下さいね。」
そう言いながら私たちは屋上から下階へと続く階段へ向かう。
エリオットさんは頭の後ろで手を組みながら、さも面倒臭そうに、また眠たげに続ける。
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