0.とある欠片の物語

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----もう何度目になるか。 ----これを意識したのは、ずいぶんと前のことだ。 ----何度も、何度も。 ----何度も、何度も。 ----“運命”を変えようとした。 ----だけど、徒労に終わる。 ----どんなに運命に抗おうとしても。 ----あのサイレンは惨劇を呼び覚ましてしまう。 ----これは、蟻地獄と同じ。一度でも、足を取られれば、もう抗うことはできない。 ----抗えば、抗うほどに身体が吸い込まれていく。 ----これは、俺達の。 ----私達の。 ----惨劇の物語。 「クスクス。みなさん。お久しぶり。もしくは、初めまして。事情があって、名を名乗ることはできないけど、面白い欠片を見つけたの。あ、欠片っていうのは本のようなもの。あの最悪の科学者が所持している本に似ているわ。違うのは、彼はこの欠片の内容を全て好き勝手に書き換えることができること。私の主にも似ているわね。もっとも、彼女よりもっと悪質だけど。  あ、ゴメンなさい。あくまで、私は今回の“欠片”の紹介役でしかなかったわね。出番もたぶん、ここだけで終わりのはず。  この欠片の世界は【絶望】しかなく。【絶望】に呑まれるしかない。【絶望】を打ち破るヒーローは出ないのかですって?無理ね。そんな都合がいい話はないわ。人は【希望】を求めるけど、【希望】はない。“奇跡”でもおきない限り。  私は宣言するわ。この世界の者に“奇跡”は起こせないと」 「ほう。この世界の者にはときたか」
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