第1章

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ついこの間入学したばかりなのに時が過ぎるのは非常に早い。5月にあった中間テストは終わり、あっという間に期末試験が近づいている。  今は7月。6月の梅雨も明け、太陽の日差しもさらに強まっている。日傘でもささないと、肌がじりじり焼けていく。  中間テストの結果は、そこそこ良かった。まあ全教科平均したら、学年全体で位置づけたら、中の上くらいだ。 浅野さんは「全教科90点以上を目指します。アハハハハ。」と宣言していたな。正直「口では簡単に言えるけど、実現すんのはなかなかムズイんじゃないのー?」と期待していなかったけど、彼女は、見事に学年10位以内にランクインしていた。将来は実家の菓子屋も、さらに繁盛させるだろう。 私はそこまで結果にこだわらないため、浅野さんのように寝食忘れて勉強、とまではできなかった。とはいえ入学早々悲惨な点数を出すのも嫌だったから、テストの前日は夜遅くまで起きていた。  古典や歴史はそこそこの点数ををマークしたが、化学や物理は自慢できるほどじゃない。  物理の先生は「公式を覚えてその式に数字を当てはめれば簡単簡単!」と笑っていたが、どう考えても公式に数字を当てはめて計算するだけじゃない気がする。そりゃ基礎中の基礎の問題はそれで丸をもらえるけど、ちょっと難しくなったら公式に当てはめる前に、秒速を分速に直したりばねの伸び縮みを考えなきゃいけないんですけど?!つまるところ私は物理が苦手というワケだ。  期末テストに関して榊さんは、「中間は最初のテストだから易しい問題が多いけど、期末テストは普通に難問が出てくる。とりあえず問題集を何回も解いて、暗記しろ。」と参考になるようなならないようなアドバイスをくれた。とにかく今回も悪い点数はとらないようにしよう。  閉められた窓の外からセミの声が聞こえてくる。セミってたった一週間しか外での生活は生きていけないのに、夏の間はずっと鳴き声が止まない。土から地上に出るセミの数って、どれくらいなんだろう。セミは見た目が気持ち悪くてあまり好きじゃないから、考えたくもないけど。木々が立ち並ぶ道を自転車で走らせるとき、上からセミが落ち来ないかすごく不安になる。今まで落ちたことは一度もないから、この先も心配ご無用だろうが。  木の下を歩くとセミのおしっこが時々かかってくる。あれは地味につらい。
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