12人が本棚に入れています
本棚に追加
トウヤは屋上でヒヨと会い、大した話もできなかったが、何度目かの逢瀬で、思い切って告白した。
そうしたらヒヨは、また寂しそうな顔をして、こう言った。
「私は死神だから、傍にいると不幸になるわ」
トウヤはその時、彼女がクラスで避けられていることを指しているのだと思った。
「それでもいい。グループからハブられても、ヒヨと一緒に居る幸せを選ぶ」
ヒヨは俯いてしまった。
「朝霧君、あなたは人間にとって最大の不幸は何だと思う?」
哲学的謎かけのようだ。
トウヤはしばらく考えて言った。
「やっぱボッチでいることだな。一人は寂しすぎる」
だから君と一緒にいたいんだ、と、遠回しに言ったつもりだった。
ヒヨは表情を変えず横を向き、フェンスに片手をかけて空を見る。
彼女の横顔は、神秘的で、憂いに満ちている。
トウヤは思わず、見とれてしまう。
何が彼女をここまで深く沈めたのだろう?
自分は彼女に比べ、何と言う底の浅い人間なのだろう。
彼女を見、自分の日頃の言動を振り返り、そんなことを思ってしまう。
彼女の底が見てみたい。
もっと彼女について知りたい。
「私はね、死ぬことだと思う」
死。
逃れられない運命。
全ての命のたどり着く場所。
「もしあなたが、私と一緒にいて、死ぬことになっても構わないというのなら、付き合いましょう」
ヒヨは今度はしっかりとトウヤの目を見た。
「よし、じゃあオッケーだな。俺と青井は、今日から恋人だ」
即断だった。
「青井が冗談で言ってるんじゃないことはわかる。だが俺も冗談で告白している訳じゃない。俺は例え死ぬことになっても青井と一緒にいる。それが俺の覚悟だ」
ヒヨは唇に指を当ててくすりと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!